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生命保険料滞納による失効は違法(2)

東京高等裁判所で、平成21年9月30日にあったという、生命保険料支払い滞り失効の「違法」判決。
平成21年10月25日の当ブログで取り上げました。

この裁判の判決文が、「保険選びネット」に掲載されていました。
(さすがです。)

この判決では、
①民法上では、契約を解除するにはまず相当の期間を定めて相手方に督促をし、それでも支払が無い時には、契約解除通知により解除の意思表示を必要とする。
一方、保険契約約款では、2ヵ月後には自動的に失効しまうと規定されている。(無催告失効条項)
この無催告失効条項は、保険契約者がその保険料支払義務を履行しない場合に、
・保険会社がその支払催促を必要としない点及び
・保険会社が保険契約者に対して契約解除の意思表示を必要としない点で、
契約者の権利を制限していることは明らかである。

②保険会社は、実務上、書面によって保険料払込の督促をし、このまま支払われないと保険契約が失効するということを契約者に通知していると主張している。
しかし、これは保険契約上の義務として行っているものでなく、保険契約者のために恩恵的に行っているに過ぎない。
このことが、保険約款自体の有効性を判断する際の材料にはならない。

③保険会社は、もし失効したとしても「復活」の制度があると主張する。
しかし、復活には、その申込みの時点での健康状態等の告知が必要であり、また、復活には保険会社の承諾を要する。しかし、約款上、承諾をする基準が何ら定められておらず、復活が認められない場合も十分あり得る。これでは、保険契約者が被る不利益が小さいとはいえない。

④保険会社は、滞納者に督促状を発送することになると、その手間と費用が増大すると主張する。
しかし、実務上では現に注意喚起の文書を発送している。
また、約款において、保険契約者に対してその住所を保険会社に届け出ることを義務付け、保険会社が保険契約者に対してする催告等は、その届出がされた住所にあてて発すれば足り、当該住所あてに発送された催告等は、それが通常到達すべきであった時に到達したものとみなす旨の定めを置けば、煩雑さを容易に回避することができる。

⑤以上のような点を総合すると、本件無催告失効条項は、消費者である保険契約者側に重大な不利益を与えるおそれがあるのに対し、その条項を無効にすることによって保険会社が被る不利益はさしたるものではない。
このことから、無催告失効条項は、民法1条2項に規定する基本原則である信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるであり、無効である。

という概要になっています。

この裁判で、ソニー生命は上告するかどうかは分かりません。仮に最高裁で争うこととなっても、東京高裁と同様の判決が下ることを期待しています。


★以下に、長文ですが、「保険選びネット」に掲載されていました、東京高裁の判決文を引用し、掲載いたします。

平成21年(ネ)第207号
生命保険契約存在確認請求控訴事件
(原審・横浜地方裁判所平成20年(ワ)第721号)
口頭弁論終結日 平成21年5月27日
        判    決
横浜市
 控訴人(原告)  ●●●●
 訴訟代理人弁護士 
 同
 訴訟復代理人弁護士 

東京都港区南青山1丁目1番1号
 被控訴人(被告) ソニー生命保険株式会社
 代表者代表取締役     
 訴訟代理人弁護士     
        主    文
1 原判決を取り消す。
2 控訴人と被控訴人との間において、別紙保険
 契約目録記載1及び2の各保険契約がいずれも
 存在することを確認する。
3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担
 とする。
        事実及び理由
第1 控訴の趣旨
 主文同旨

第2 事案の概要
 1 本件は、別紙保険契約目録記載1の医療保険契約(以下「本件医療保険契約」という。)及び同目録記載2の生命保険契約(以下「本件生命保険契約」といい、本件医療保険契約と併せて「本件各保険契約」と総称する。)の各保険契約者兼被保険者である控訴人が、各保険者である被控訴人に対して、控訴人と被控訴人との間において本件各保険契約がいずれも存在することの確認を求める訴訟である。被控訴人は、本件各保険契約は、控訴人の保険料未払を理由に、本件各保険契約の保険料が一定期間未払のときは無催告で契約は失効するとの約款の定めに従い、平成19年2月末日の経過で失効したと主張している(被控訴人は抗弁として上記約款の存在を主張するものであり、民法の規定に従い、保険料の支払を催告した上、解除の意思表示をした旨の抗弁は、予備的にも出されていない。)。
 原判決は、上記抗弁を容れ、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴をした。

 2 前提事実(証拠を掲記したもの以外は、当事者間に争いがない。)
(1)当事者
  ア 控訴人は、消費者契約法2条1項に規定る消費者である。

  イ 被控訴人は、保険業法2条3項に規定する生命保険会社であるから、消費者契約法2条2項に規定する事業者である。

(2)本件各保険契約の締結
  ア 控訴人は、平成16年8月1日、被控訴人との間で本件医療保険契約を締結した。控人と被控訴人は、本件医療保険契約の内容として別紙保険契約目録1に記載するほか、総合医療保険普通保険約款(甲4。以下「本件医療保険約款」という。)の定めによることを合意した。本件医療保険契約には、解約返戻金の定めはない(甲1)。

  イ 控訴人は、平成17年3月1日、被控訴人との間で本件生命保険契約を締結した控訴人と被控訴人は、本件生命保険契約の内容として別紙保険契約目録2に記載するほか、平準定期保険普通保険約款(甲5。以下「本件生命保険約款」という。)の定めによることを合意した。
    本件生命保険契約における契約締結後経過年数2年の時点での解約返戻金の額は、零円である(甲2)。

(3)本件医療保険約款及び本件生命保険約款(以下「本件保険約款」と総称する。)における保険料の弁済期と本件各保険契約の失効の定め
 本件各保険契約の保険料の支払は、別紙保険契約目録1及び2に記載のとおり月払(口座振替の方法)であるところ、本件保険約款には、月払の保険料の弁済期と本件各保険契約の失効に関して次のような定めがある(甲4、5)。

  ア 第2回目以後の保険料は、月単位の契約応当日の属する月の初日から末日まで(以下「払込期月」という。)の間に払い込む。

  イ 第2回目以後の保険料の払込みについては、払込期月の翌月の初日から末日までを猶予期間とする。

  ウ イの猶予期間内に保険料の払込みがないときは、保険契約は、猶予期間満了日の翌日から効力を失う。

  エ イの猶予期間内に保険給付の支払事由が生じたときは、支払うべき保険給付の金額から未払保険料の金額を差し引く。

  オ 保険料の払込みがないままイの猶予期間が過ぎた場合でも、払い込むべき保険料と利息の合計額が解約返戻金の額(当敦保険料の払込みがあったものとして計算し、保険契約者に対する貸付けがある場合には、その元利金を差い引いた残額)を超えないときは、自動的に被控訴人が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる。当該貸付けは猶予期間満了日にされたものとし、その利息は年8%以下の被控訴人所定の利率で計算したものとする。

  カ 保険契約者は、保険契約が効力を失った日から起算して1年以内(本件医療保険契約の場合)又は3年以内(本件生命保険契約の場合)であれば、被控訴人の承諾を得て、保険契約を復活させることができる。
   この場合における被控訴人の責任開始期は、復活日とする。

(4)控訴人は、平成18年7月ころ、病院での検査の結果、特発性大腿骨頭壊死症と診断され、同年11月ころから月に2、3回ほど電気治療を受けている(乙1、2の各1、2)。

(5)保険料振替口座の残高不足たより、平成19年1月を払込期月とする同月分の本件各保険契約の保険料の支払がされなかった。

(6)平成19年2月、同年1月分及び2月分の本件各保険契約の保険料を併せて保険料振替口座から振り替えることとされていたが、同口座の残高不足により、口座振替がされず、控訴人は、同月末日までに支払うべき同年1月分の本件各保険契約の保険料を支払わなかった。

(7)控訴人は、平成19年3月8日、被控訴人に対し、1月ないし3月分の保険料相当額を添えて本件各保険契約の復活の申込みをしたが、被控訴人は、同月16日、控訴人の健康状態を主たる理由に復活の申込みを承諾しないことを決定し(乙1、2の各1、2)、同月19日、控訴人にその旨告知した。

(8)控訴人は、被控訴人が本件各保険契約は平成19年2月末日の経過で失効したと主張しているため、現在まで本件各保険契約の保険料を供革している。

 3 争点
(1)保険料を払込期月の翌月末日までに支払わないときは、本件各保険契約が同日の経過により当然に効力を失う旨の本件保険約款の定め(以下「本件無催告失効条項」という。)が消費者契約法10条の規定により、又は公序良俗若しくは信義則に反して、無効となるかどうか

(2)被控訴人が本件各保険契約の復活を承諾しないことは、信義則に反し、又は権利濫用となるかどうか。

 4 争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(本件無催告失効条項と消費者契約法10条又は公序良俗若しくは信義則)について

 ア 争点(1)に関する当事者の主張は、当審における主張を下記イのとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の第2の3(1)(原判決6貢1行目から9貢14行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決9貢6行目から14行目までを次のように改める。
「(ウ) 控訴人は、平成17年6月分の本件各保険契約の保険料を払込期月内に支払わなかったが、その際、被控訴人の担当者の■■■■(以下「■■」という。)は、控訴人から保険料振替口座が残高不足になりがちであると聞いていたので、控訴人に対し、保険料不払により本件各保険契約が失効しても復活の手続がとれるが、一定の健康状態でなければ復活できないことがあるので、保険料不払には注意するよう伝えた。
 本件各保険契約は、いずれも保険料振替口座の残高不足により、平成17年9月1日に失効して同月15日に復活し、同年12月1日に失効して同月2日に復活した。これらの際にも、■■は、控訴人・に対し、上記と同様の注意をした。
 控訴人は、平成18年10月分及び同年11月分の本件各保険契約の保険料も払込期月内に支払わなかった。■■は、控訴人から、大腿部の一部が壊死したとの連絡を受けたため、控訴人に対し、本件各保険契約が失効した場合には、復活に影響を与えるおそれがあることから、保険料不払をしないよう特に注意をした。
 被控訴人は、控訴人が保険料振替口座の残高不足により平成19年1月分の本件各保険契約の保険料を支払わなかったので、同年2月14日、控訴人に対し、同月分の保険料振替の際に同年1月分の保険料も併せて振り替えること、同年2月中に同年1月分の保険料の支払がない場合には、本件各保険契約が失効すること等を記載した通知書を送付し、その際、コンビニエンスストアからの送金もできるように、コンビニエンスストア用の払込票も併せて送付した。
 上記のような事情の下においては、同年3月1日の本件各保険契約の失効が無効となる理由はない。」

 イ 本件無催告失効条項が消費者契約法10条の規定により無効となるかどうかについて

 (控訴人の主張)
 (ア) 本件無催告失効条項は、民法の定める債務不履行解除(同法541条)の要件に比し、①債務者の帰資性、②相当期間を定めた催告、③催告期間の経過、④解除の意思表示をいずれも不要とする点で消費者の権利を制限する条項であって、同法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害しており、消費者契約法10条の規定により無効である。
    たとえ何らかの代償措置があったとしても、催告なしに契約を失効させることは許されないというべきである。なお、本件無催告失効条項に関しては、猶予期間が不当に短いこと、解約返戻金による保険料自動貸付けの制度は解約金返戻金のない保険契約には意味がないこと、保険契約の復活にっいては保険者の裁量が大幅に認められていること等から、本件保険約款中に設けられた代償措置にも合理的なものはないといえる。

 (イ) 被控訴人は、控訴人に督促の書面を送付したと主張するが、本件無催告失効条項が消費者契約法10条の規定により無効となるかどうかは、専ら本件保険約款の規定の在り方の問題であり、被控訴人主張のような約款外の措置(被控訴人にそのような措置をとる義務はなく、控訴人にもそのような書面の送付を受ける権利はない。)がとられたことは、問題ではない。
  なお、被控訴人のした書面による督促は、1箇月分を支払えば失効しないはずであるのに、2箇月分を支払うよう催告するなど、適切な催告であったとはいえない。

 (被控訴人の主張)
(ア) 司法は具体的な紛争に関してその解決を図ること′を第一義としていることからすると、抽象的に本件無催告条項の有効性を議論するよりも、まずは、本件の具体的な事実関係に照らして、本件各保険契約の失効の有無を論ずるべきである。原判決の「事実及び理由」欄の第2の3(1)イ桝(上記アにおいて訂正したもの)に主張した事情の下においては、本件各保険契約が有効に失効したことに疑問を差し挟む余地はない0
 第8次国民生活審議会消費者政策部会報告においては、保険料の不払により保険契約が無催告で当然に失効する旨の定めをする約款についての実務上の改善策として、書面による保険料払込みの督促をし、その督促に当たっては保険料の支払がないまま払込猶予期間を過ぎる′と保険契約が失効することを保険契約者に明瞭に理解させるための措置を講ずる必要があるとの提言を行っているが、本件においては、被控訴人は、その提言に沿った取扱いをしており、非難されるべき点はない。

(イ) また、保険契約は、その性質上、あらかじめ保険料の支払時期、支払方法等の商品内容が決まっていて、かつ、膨大な数の保険契約者との間で行う画一的、集団的な取引であるから、保険料債務の不履行があっ夷場合の催告、履行請求、解除等に伴うコストを考えると、他の保険契約者の負担にならないように大量の契約を機械的に処理せざるを得ず、同じ継続的契約であるといっても、賃貸借契約のように当事者間の個々の信頼関係にまで配慮することはできない。したがって、賃貸借契約を例に引いて、1箇月分だけの保険料の不払で保険契約が失効するのは不当であるという控訴人の主張は、失当である

(ウ)次のような事情にかんがみると本件無催告失効条項は、民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるとはいえない。

  ① 本件保険約款では、払込期月の経過後1箇月間を払込猶予期間としていること。
  ② 実務上、保険料の振替不能があった場合には、事実上の督促の通知が送付されていること。         t

  ③ 本件保険約款では、解約返戻金の範囲内で保険料自動貸付けの制度が設けられており、これにより保険契約の失効を防ぐことが可能であること。

  ④ 本件保険約款には、保険契約の復活の制があること。

  ⑤ 催告の際に停止条件付解除の意思表示を併せて行う場合を考えると、解除の意思表示を要せずに失効するとすることが特段保険契約者に不利益を与えるものであるとはいえないこと。

  ⑥ 保険料支払債務は金銭債務であるから、保険料の不払にフいては、通常保険契約者に帰責事由が認められること。

  ⑦ 本件無催告失効条項は、保険契約の継続を希望しない保険契約者にとっては、保険者から履行の強制や損害賠償請求を受けないで簡単に保険関係から離脱することができるメリットがあること。

  ⑧ 本件無催告失効条項は、主務大臣の認可を受けていること。

  ⑨ 保険契約は、不動産賃貸借契約とはその性質が大きく異なり、信頼関係破壊の法理が適用されないこと。

  ⑩ 保険法(平成20年法律第56号)の立案過程において、本件無催告失効条項に関連する規定の制定が見送られたこと。

 ⑪ 本件においては、原判決の「事実及び理由」欄の第2の3(1)イ桝(上記アにおいて訂正したもの)のとおりの事情が認められること。

(2)争点(2)(本件各保険契約の復活の不承諾が信義則違反又は権利濫用となるかどうか)について
 争点(2)に関する当事者の主張は、原判決の「事実及び理由」欄の第2の3(2)(原判決9頁15行目から13貢21行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決12貢15行目の「前記1、(4)、ア、イ、エ及び同(5)、イ」を「前記(1)イ桝」に、同13貢18行目及び19行目の「前記1、(4)ア、イ、エ及び同(5)ア、イ」を「前記(1)イ(ウ)」に改める。

第3 当裁判所の判断
 1争点(1)のうち本件無催告失効条項が消費者契約法10条の規定により無効となるかどうかについて

(1)上記第2の2の前提事実によれば、控訴人は消費者契約法2条1項に規定する消費者、被控訴人は同条2項に規定する事業者であるから、本件各保険契約は、同条3項に規定する消費者契約であって、同法の施行期日(平成13年4月1日)以後に締結されたものであるから、同法10条の適用があることは明らかである。
 消費者契約法10条の規定は、民法、商法その他の法律の公の秩序に閲しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、属法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とするものである。

(2)そこで、まず本件無催告失効条項が民法、商法その他の法律の公の秩序に閲しない規定の適用むごまる場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するものであるかどうかについて検討する。

 本件保険約款における第2回目以後の保険料の支払に関する定めは、上記前提事実(上記第2の2(3))のとおりである。この定めによれば、ある月の保険料の払込期月は当該月の初日から末日までの間とされるが、払込期月の翌月の初日から末日までが猶予期間とされているから、保険契約者が遅滞の責任を負うこととなる「期限の到来した時」(民法412条1項)は、猶予期間の末日が経過した時であるというべきである。すなわち、保険者が保険料支払債務の強制履行(同法414条1項)を裁判所に請求することができ、未払保険料に対する遅延損害金(同法415条)の請求をすることができ、保険契約の解除(同法541条)をすることができるのは、猶予期間の末日が経過した時からである(もっとも、払込期月中又は猶予期間中に保険給付の支払事由が生じた場合には、保険給付からまだ猶予期間の末日が到来していない保険料の額を差し引くことができる旨の定めが置かれている(本件医療保険約款12条4項、16条1項、本件生命保険約款8条4項、12条1項。甲4、5)。)。そして、本件保険約款上、払込期月文は猶予期間の末日が経過した場合に保険者が保険契約者に対して保険料支払の催告ないし督促をする旨の定めは置かれておらず、保険料の支払がないまま猶予期間の末日が経過すると、本件各保険契約は、直ちに、保険者から保険契約者に対する解除の意思表示がなくても、当然に、その効力を失うこととされている。

 民法540条1項及び541条は、契約当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、’相手方は、契約の解除草することができること、当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってすることを定めている。したがって、本件無催告失効条項がないとすると、民法の当該規定によれば、保険者は、猶予期間の末日までに猶予期間の前月分の保険料の支払がない場合には、相当の期間を定めてその履行の催告をし、その相当期間内に履行がないときに保険契約者に対して解除の意思表示(その相当期間内に履行がないことを停止条件として催告と同時に解除の意思表示をすることも可能である。)をすることにより、保険契約を終了させることができるのが原則であ
ることになる。

 民法が契約を解除するにはまず相当の期間を定めた履行の催告をし、その相当期間内に履行がないときに履行をしない者に対して解除の意思表示をするとしているのは、契約の解除をするために一定の要件を課し、履行遅滞に陥った債務者の権利の保護を図る趣旨であることが明らかであり、第2回目以後の保険料の支払に関して上記のような定めを内容とする本件無催告失効条項は、保険契約者がその保険料支払虐務を履行しない場合に保険者がその履行の催告をすることを要しないとしている点及び保険者が保険契約者に対して契約解除の意思表示をすることを要しないとしている点において、同法の公の秩序に閲しない規定(同法540条1項及び541条)の適用による場合に比し、消費者である保険契約者の権利を制限しているものであることは、明らかである。

 そうすると、本件においては、本件無催告失効条項が民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるかどうかが問題になるので、以下この点について検討す る。

(3)本件無催告失効条項が民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害 するものであるかどうかについて

 ア(ア) 本件医療保険契約は被保険者が疾病により入院した場合に日額1万円の保険給付を行うことを内容とし、保険期間を終身とす声もの(甲1)、本件生命保険契約は被保険者が死亡し、又は高度障害となった場合に保険金受取人が保険金1000万円の支払を受けることを内容とし、保険期間を10年とするもの(甲2)であり、いずれも保険者と保険契約者との間に長期間にわたって継続的な関係が形成されるも、のである。そして、その契約内容は、本件医療保険契約については被保険者が疾病で入院した場合の保険契約者の負担を保険給付によって軽減し、本件生命保険契約については被保険者が死亡し、又は高度障害になった場合の保険金受取人の生活を保障することを目的とするものであり、いずれも被保険者、保険契約者又は保険金受取人にとって、本件各保険契約が保
険契約者の意に反して終了することになった場合の不利益の度合いは、極めて大きいものであるということができる。このように医療保険契約や生命保険契約においては、消費者である保険契約者側にとって、それが意に反して終了することになった場合の不利益の度合いは極めて大きいものであるということができる。

 (イ)そして、本件各保険契約における保険料の支払方法については、口座振替の特約が付されている。このような口座振替の方法は、今日においては原則的な保険料の支払方法になっていると認められるところ(公知の事実)、この方法による保険料の支払については、振替予定日(通常、払込期月中の一定の一日が予定される。また猶予期間中の振替についても猶予期間中の一定の一日が予定される。)当日において保険料振替口座に振替に必要な金額以上の残高を保持しておかなければならず、保険契約者のささいな不注意による残高不足から振替不能になってしまう危険があるものである(今日では、各種公共料金の支払、ローンやクレジットの返済、賃料、税金の支払等様々な支払のために口座振替が利用され、残高管理が難しくなっている状況にあることは公知の事実である。)。

 しかも、口座振替に係る金融機関との間をも含めた約定によりその取り扱いは変わり得るものであるが、本件のように同一日に複数の保険契約の保険料の口座振替が予定されている場合には(今日ではそのような事例は決して少なくないと考えられる。)、仮に一の保険契約の保険料を振り替えるには十分な残高があったとしても、複数の保険契約の保険料の合計額以上の残高がなければ、全部の保険契約の保険料について振替不能となる事態が起こり得るのである。また、猶予期間中の口座振替については、2箇月分の合計保険料以上の残高がなければ振替不能となる事態が起こり得るのであり、本件のように猶予期間の末日までに複数の保険契約の保険料の支払を要する場合には、猶予期間中の振替予定日に保険料振替口座に一の保険契約の猶予中の保険料を支払うには十分の残高があったとしても、結局は全部が振替不能となり、当該保険契約を含めて全部の保険契約が失効してしまうことも起こり得るのである。このような場合にも、保険契約は猶予期間の末日の経過とともに当然に失効してしまうため、保険契約者が同日の直後に振替不能の事実に気が付いたとしても手遅れになって、保険契約者にとって酷な事態が発生すろ可能性があるものである

(ウ)上記のように、保険契約者側にとって、保険契約が意に反して終了することになった場合の不利益の度合いは極めて大きいところ、保険料の支払を口座振替の方法にした場合は、保険契約者のささいな不注意や口座振替の手続上の問題から保険契約が失効することがあり得るのである。そして、このような事態が生ずるのを防止するため、民法の原則どおりに、保険契約が終了する前に保険契約者に保険料の支払を催告するという手順を踏む必要があるのである(なお、払込期月が経過した後に更に一定の猶予期間が設けられているとしても、それは、上記事態の防止のために有効なものとはいえない。)。本件無催告失効条項により消費者である保険契約者側が被る不利益は大きいというべきである。

 (エ)なお、この点に関し、被控訴人は、第8次国民生活審議会消費者政策部会報告での痍言に沿って、実務上、書面による保険料払込の督促をし、その督促に当たっては保険料の支払がないまま払込猶予期間を過ぎると保険契約が失効することを明瞭に理解させるための措置を講じていることを考慮すべきであると主張する。確かに、弁論
の全趣旨によれば、本件でも、保険料振替口座の残高不足により平成19年1月分の本件各保険契約の保険料の振替ができなかった後、被控訴人は、同年2月14日、控訴人に対し、同月分の保険料の振替時に同年1月分の保険料の振替も併せて行うこと、同年2月中に同年1月分の保険料の支払がない場合には本件各保険契約が失効することなど
を記載した通知書を送付したことが認められる。

しかしながら、本件で問題になっているのは、本件無催告失効条項自体が消費者契約法10条の規定により無効となるかどうかであって、被控訴人が約款外の実務においてそのような措置をとっていること(なお、これは保険契約上の義務として行っているものでないことが明らかであるから、保険契約者のためには恩恵的なものにすぎない。)は、本件保険約款自体の有効性を判断する際に考慮すべきであるということはできない。

 (オ) また、本件保険約款には解約返戻金の範囲内で保険料自動貸付けの制度が設けられているが、それにより保険契約の朱効を防ぐためには十分な解約返戻金がなければ意味のないものであるから、上記のような保険契約者側の被る不利益を少なくする手段としては十分とはいえない。現に本件医療保険契約には解約返戻金がないし(甲1)、本件生命保険契約でも経過年数2年までは解約返戻金がない(甲2)のである。

 また、本件保険約款には保険契約の復活の制度が設けられているが、保険契約の復活の申込みをする場合には、復活申込みの時点における被保険者の健康状態等の告知を要し(弁論の全趣旨)、
例えば復活日前に発病した疾病の治療を目的とする入院については疾病入院給付金の支給が(本件医療保険約款19条4項において読み替えて準用する本件医療保険約款1条2項、2条1項の表「疾病入院給付金」の項(甲4))、復活日前に発生した傷害又は発病した疾病を直接の原因として高度障害状態になった場合には高度障害保険金の支給
が(本件生命保険約款15条4項において読み替えて準用する本件生命保険約款1条2項、2条1項の表「高度障害保険金」の項(甲5))それぞれ受けられないことになる。また、復活には保険者の承諾を要することとされているところ、約款上その承諾をする基準が何ら定められていないのであり、復活が認められない場合も十分あり得るの
である(甲4、5。現に本件では、復活が認められていない。)。したがって、保険契約が失効した場合でも、保険契約者は保険契約を復活させることができるから、保険契約者が被る不利益が小さいということは必ずしもできないものである。

 イ 他方、本件無催告失効条項を無効とした場合に被る被控訴人の不利益としては、保険者である被控訴人は、多数の保険契約者を相手方としていることから、民法の原則に従って催告や解除の意思表示を要することになると、大量処理のため手間とコストがかかることが挙げられる。

 しかしながら、被控訴人は、上記ア(エ)のとおり、保険料の口座振替ができないまま払込期月が経過した場合に、約款上の根拠はないものの、実務上、保険契約者に対して保険料の振替ができなかったこと及び猶予期間内の振替予定日に2箇月分の振替を行うことを通知する運用をしているのである。
この運用を前提とすると、民法の原則に従って催告等することによる手間やコストの問題はさしたる問題ではないということが十分うかがえるのである。もっとも、この点に関し、保険者である被控訴人は、民法に従って催告等を要することになると、それは配達証明付き内容証明郵便ですることが必要となり、しかも、現実に保険契約者に到達するまで何度も繰り返さなくてはならないとして、そのための費用の増大を懸念していることがうかがわれる。しかしながら、その点は、約款において、保険契約者に対してその住所を保険者に届け出ることを義務付け、保険者が保険契約者に対してする催告等は、その届出がされた住所にあてて発すれば足り、当該住所あてに発送された催告等は、それが通常到達すべきであった時に到達したものとみなす旨の定めを置けば、容易に回避することができるものである(なお、本件医療保険約款38条、本件生命保険約款35条には実際にその趣旨の定めがある(甲4、5)。なお、会社法126条1項及び2項等を参照)。そして、催告等に閲しそのような定めを置くことには大量処理の観点等からして十分合理性があるから、催告等の方法についてそのような定めを約款に置いたからといって消費者契約法10条の規定によりその有効性に疑問が生ずるということにはならないと考えられる。

 ウ 以上のような点を総合すると、本件無催告失効条項は、消費者である保険契約者側に重大な不利益を与えるおそれがあるのに対し、その条項を無効にすることによって保険者である被控訴人が被る不利益はさしたるものではないのである
(現状の実務の運用に比べて手間やコストが増大するという問題は約款の規定を整備することで十分回避できる。)から、民法1条2項に規定する基本原則である信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるといわざるを得ない。

(4)ア 以上によれば、本件無催告失効条項は、消費者契約法10条の規定により無効になるというべきであり、本件無催告失効条項によって本件各保険契約が失効することはないというべきである。

 イ なお、被控訴人は、本件無催告失効条項が約款として主務大臣の認可を受けていること又は保険法の立案過程において本件無催告失効条項に関連する規定の制定が見送られたことを理由に、本件無催告失効条項が民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものではないと主張するが、そのような事情が本件
の結論を左右するものではないことは明らかであり、その主張を採用することはできない。

 さらに被控訴人は、司法の使命は具体的な紛争に関してその解決を図ることであるとし、抽象的に本件無催告失効条項の有効性を検討するのではなく、まずは、本件の具体的な事実関係に照らして、本件各保険契約の失効の有無を論ずるべきであるとし、①控訴人が平成17年6月分の本件各保険契約の保険料を払込期月内に支払わなかった際、被控訴人の担当者の■■は、控訴人に対し、一定の健康状態でなければ保険契約の復活ができないことがあるので、保険料不払には一注意するよう伝えたこと、②本件各保険契約は、俸険料振替口座の残高不足により、平成17年9月1日に失効して同月15日に復活し、同年12月1日に失効して同月2日に復活したが、これらの際にも、■■は、控訴人に対し、上記①と同様の注意をしたこと、③控訴人は、平成18年10月分及び同年11月分の本件
各保険契約の保険料も払込期月内に支払わなかったので、■■は、控訴人から大腿部の一部が壊死したとの連絡を受けていたこともあり、控訴人に対し、本件各保険契約が失効した場合には、復活に影響を与えるおそれがあることから、保険料不払をしないよう特に注意したこと、④控訴人が保険料振替口座の残高不足により平成19年1月分の本件各保険契約の保険料を支払わ卑かったので、被控訴人は、同年2月14日、控訴人に対し、同月分の保険料振替の際に同年1月分の保険料も併せて振り・替えること、同年2月中に同年1月分の保険料の支払がない場合にはミ本件各保険契約が失効すること等を記載した通知書を送付し、その際、コンビニエンスストアからの送金もできるように、コンビニエンスストア用の払込票も併せて送付したことという本件で認められる事情の下において
は、本件各保険契約は失効したとするのが相当である旨主張する。

 しかしながら、本件で問題となるのは、本件無催告失効条項が消費者契約法10条の規定により無効であるかどうかであり、この点は、個別の当事者間における事情を捨象して、当該条項を抽象的に検討して判断すべきであるから(同条に規定する消費者契約の条項を含む消費者契約の締結について、適格消費者団体による差止請求が可能であるのも(同法12条3項及び4項)、条項を抽象的に判断することにより、当該条項の有効無効の判断が可能であるからである。)、被控訴人の主張は、その主張自体が失当である。

 2 そうすると、被控訴人の抗弁は理由がないから、控訴人の請求は理由があることになる(なお、被控訴人は、抗弁として本件無催告失効条項の存在を主張するだけで、控訴人の本件各保険契約の保険料の履行遅滞を理由に催告して本件各保険契約を解除したとの主張はしていないし、保険料の履行遅滞を理由に本件各保険契約の解除の意思表示をしたとの事実も認められない(弁論の全趣旨)。そして、上記前提事実(第2の2(8))のとおり、控訴人は、被控訴人が本件各保険契約は平成19年2月末日の経過で失効したと主張してい
るため、現在まで本件各保険契約の保険料を供託しているのである。)。

 3 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人と被控訴人との間において、別紙保険契約目録記載1及び2の各保険契約がいずれも存在することの確認を求める控訴人の本件請求は理由があるから、原判決を取り消・し、控訴人の請求を認容すべきである。よって、主文のとおり判決する。

  東京高等裁判所第9民事部

        裁判長裁判官 大 坪   丘
            裁判官 宇田川   基

 裁判官尾島明は、てん補のため、署名押印をす
ることができない。

        裁判長裁判官 大 坪   丘

        保険契約目録
1 証券番号 第2441365066号
  契約日 平成16年8月1日
  契約者名 控訴人
  被保険者 控訴人
  保険種類 ①総合医療保険、②退院給付金特
       約、③入院初期給付特約
  保障内容 ①入院給付金日額1万円、②退院
       給付金額5万円、③入院初期給付
        金日額1万円
  保険期間 ①終身、②33年、③終身
  払込期間 同上
  保険料 ①7150円、⑥665円、③640円(合
       計保険料8455円)
  保険料の払込方法 月払、口座振替(特約)
            扱い
 2 証券番号 第2501434003号
 契約日 平成17年3月1日
 責任開始日 平成17年2月15日
 契約者名 控訴人
 被保険者 控訴人
 死亡保険金受取人 ●●●●
 保険種類 平準定期保険
 保障内容 死亡(高度障害)保険金額1000万円
 保険期間10年(満了日 平成27年2月28日)
 払込醜聞 同上
 保険料 7664円
 保険料の払込方法 月払、口座振替扱い
                    以 上

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初めて生命保険を契約してから○十年。
営業員に勧められるがままに保険契約してはいけないと分かってから、○年。
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